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脳動脈瘤は、全人口の3〜4%の方に認められます。脳動脈瘤の原因は明確にはわかっていません。家族性に発生頻度が高い場合もあります。「脳動脈瘤」が破裂すると、くも膜下出血となります。
発症直後から短期間のうちに、患者さんの10〜20%が死亡します。死亡をまぬがれた患者さんでも、2回目の出血(再破裂)を起こすと死亡率が65%弱に増加し、破裂を繰り返すたびに状態が悪くなるので、早期に再破裂しないように手術します。くも膜下出血の原因は、およそ80%は脳の動脈にできた瘤が出血する「脳動脈瘤破裂」です。脳動静脈奇形などが原因である場合もあります。
再出血を予防するため、出血後72時間以内に手術(クリッピング手術などの開頭手術もしくは動脈瘤コイル塞栓術などの脳血管内手術)を行うことが勧められます。
未破裂動脈瘤は、血管壁の弱い部分が年齢とともに膨隆することで生じます。無症状のことが多いですが、突然破裂するとくも膜下出血を起こします。症状がある場合には早期の手術が勧められます。高血圧、喫煙、大量の飲酒は、破裂と関連があるとされています。
無症状の場合には、降圧治療、禁煙、節酒の上で、定期的な検査で経過観察します。大きさ(5〜7mm以上)、部位(前交通動脈瘤、内頚動脈後交通動脈分岐部瘤、脳底動脈瘤、椎骨動脈瘤)、形(奥行が大きい、不整形、ブレブと呼ばれる娘動脈瘤を有する)、60歳以上、くも膜下出血の既往がある場合には、そうでない動脈瘤より破裂の危険性が高いので経過観察を続行するか、予防的に手術をするか慎重に検討します。
全身麻酔で行います。足の付け根、腕の動脈からカテーテルと呼ばれる手術用のチューブを血管に挿入します。脳動脈瘤までカテーテルを到達させたのちに、プラチナコイル(髪の毛のような細い金属)を動脈瘤の中を覆うように挿入します。数本(動脈瘤の大きさによっては十数本)のプラチナコイルを動脈瘤に充填することで、動脈瘤に血流が入らないようにします。プラチナコイルが動脈瘤から正常の血管にでてこないようにステント(筒状の金属のメッシュ)で支える場合、ステント支援下コイル塞栓術と呼びます。
プラチナコイルを使用せず(もしくは数本のみ使用する)、フローダイバーターと呼ばれる網目の細かいステントを動脈瘤の手前から奥の血管に留置することで動脈瘤の内部に血流が届かないようにするフローダイバーター留置術で治療できる場合もあります。手術前から抗血小板剤(いわゆる血液サラサラの薬)を毎日内服します。
手術後も一定期間内服を続けます。
全身麻酔で、開頭します。顕微鏡や外視鏡(大きな内視鏡のような最新の観察器械)で拡大視し、脳と脳の間にあるくも膜を切開して脳動脈瘤へ到達します。小さな洗濯バサミのようなクリップで脳動脈瘤の入口を遮断して、破裂しないようにします。硬膜を縫合、頭蓋骨を戻してチタン製のねじとプレートで固定します。
頚部内頚動脈狭窄症は、動脈硬化症などが原因で脳に血流を送る頚部の頸動脈が狭窄する病気です。狭窄のため血液の流れが妨げられると、脳や脊髄への酸素や栄養分の供給ができなくなったり、狭窄部でできた血のかたまり(血栓)が脳の血管に詰まって、脳梗塞を生じることがあります。
症状は一時的なこと(一過性脳虚血発作)もあり、後遺症を残すこと(脳梗塞)もあります。脳梗塞を起こすと、その部位の応じた様々な神経症状(運動麻痺、知覚障害、言語障害、視機能障害、高次脳機能障害など)を呈し、重症の場合には、寝たきりや植物状態、さらには生命の危険を伴うこともあります。無症状であっても狭窄の度合いが強いと、一定の割合でいずれ症状を呈します(脳梗塞を発症します)。
治療手段は、内科的治療および外科的治療があります。内科的治療は、動脈硬化の原因である高血圧、高脂血症(高コレステロール血症)、糖尿病や狭窄部に起こる血栓症を予防するための薬物治療です。外科的治療は、直達切開手術(頸動脈内膜剥離術)と血管内治療(頸動脈ステント留置術)があります。
頸動脈内膜剥離術は、全身麻酔で狭窄した血管を一定時間遮断して切開し狭窄の原因(コレステロールや脂肪のかたまり)を除去するします。
頸動脈ステント留置術は、風船カテーテルで狭窄部を広げ、金属のメッシュでできた円筒状の内張り(ステント)を留置して血管を内側から支えます。
頸動脈ステント留置術は局所麻酔で行うことができますが、当院ではほとんどの患者さんで全身麻酔で行います。
内科治療、外科治療いずれの方法を選択するかは、患者さんの状態により適切な方法をお勧めします。
硬膜動静脈瘻とは、後天的に動脈と静脈が毛細血管を介さずに、硬膜を介して直接交通する病気です。
動脈の血流が直接静脈に流入することで、静脈圧が上昇して、様々な神経症状(例えば、耳鳴り、複視、結膜浮腫、眼球突出などの眼症状)をきたします。脳出血の原因となることもあります。
治療方法は血管内手術、開頭手術、放射線治療があります。血管内手術で治癒することが増えています。動静脈瘻の状態により治療方法を選択します。
脳動静脈奇形とは、脳血管の発生異常で、生まれつきの病気です
通常、動脈は体の末梢で毛細血管となり、その後に静脈へ移行して心臓へ戻ります。脳動静脈奇形は、毛細血管が欠落して動脈と静脈が直接ナイダスとよばれる血管のかたまりを介して繋がっている病気です。
本来、毛細血管で分散される動脈の圧力が、直接静脈系に加わります。無症状のことが多いですが、頭痛やてんかん発作で診断されることもあります。年間約2〜3%で脳出血やくも膜下出血を発症します。
出血した場合は、その後の1年で再出血を予防するために脳血管内治療、開頭摘出術、ガンマナイフを組み合わせて治療します。出血していない場合でも、出血する危険が高い、治療が安全にできる場合には、治療する場合があります。
何らかの原因で、脳を栄養する血管が閉塞することにより、脳細胞が壊死する病気です。麻痺、失語(言葉が出ない、理解できない)、構音障害(ろれつが回らない)、視野障害、意識障害などが典型的な症状です。
血管が詰まると、脳細胞の壊死が進みますから、発症早期からの治療が望まれます。
点滴での治療に加え、重症度・発症からの時間経過によって、下記の治療を行うことがあります。
点滴からtPAという薬剤を投与することで、閉塞した血栓を融解させ、再開通が得られる可能性があります。脳梗塞発症から4時間半以内に投与できれば、脳梗塞の予後が改善することが期待できます。
ただし、脳出血など、出血性合併症を伴う可能性があることから、投与できない場合もあります。
脳血管の中でも比較的太い血管が閉塞した場合に選択肢となります。
カテーテルを挿入し、血管を閉塞させた血栓を、吸引やステント(金属の筒状の網)で回収します。再開通を得られれば、脳梗塞の予後の改善が得られることが期待できます。
ただし、tPA静注療法と同様に出血性合併症のリスクも伴います。当院ではこれらの治療を24時間365日行える体制を構築しております。
なお、上記治療は脳梗塞を完全に治す治療ではありません。
時間経過で完成された脳梗塞による症状は後遺症として残存します。
脳のさまざまな場所で出血を起こすことがあります。症状は、脳梗塞と同様に麻痺、失語、構音障害、視野障害、意識障害などが起こり得ます。
原因は、高血圧を背景としたものが最も多く、その他、上記のような動脈瘤、動静脈奇形/瘻、アミロイド血管症、モヤモヤ病、海綿状血管腫などから出血することもあります。
比較的小さい脳出血に対しては、点滴などによる保存的治療が選択されますが、出血量が多い場合は命に係わることもあるため、下記のような手術が選択されます。
全身麻酔下に、開頭し、血腫を取り除きます。
術野が広く得られるため、出血源の確実な止血を行うことが可能です。
頭蓋骨に穴をあけ(穿頭)、その部位から内視鏡を挿入し、血腫にアプローチし、血腫を取り除きます。
創部が小さくて済むことから、開頭術に比べ、患者さんへの侵襲(負担)は小さく済みます。