食事、歯みがき、洗顔、ひげそりなどの際に、顔の片側(右か左のどちらか)に電気が走るような鋭い痛みが生じる病気です。時間は短いですが、非常に強い痛みであり、食事や会話ができなくなる場合もあります。
三叉神経という顔面の感覚を伝える脳神経が、頭の中で血管に押されていることが痛みの原因です。血管による圧迫が長期間にわたると神経が過敏な状態となり、軽く触れただけの刺激で痛みが生じやすくなると考えられています。まれに、脳腫瘍が神経を圧迫している場合もあります。病気の診断にあたっては、詳細な問診と、脳のMRI所見が重要です。
痛みに対しては、まずは神経のはたらきを抑える薬を使います。昔からよく使われてきたカルバマゼピン(テグレトール)という薬が有効である場合が多いですが、プレガバリン(リリカ)やミロガバリン(タリージェ)といった新しい薬を使うこともあります。
薬の効果が十分でない場合や、薬の副作用の影響等で服用ができない場合は、手術による治療を検討します。耳の後ろの部分の頭蓋骨を小さく外し、顕微鏡で頭の中を観察しながら、三叉神経に当たっている血管を移動させます。これを、微小血管減圧術といいます。
下図は、左三叉神経痛に対する手術の様子です。Aでは、▲で示された血管(上小脳動脈)が、*で示された三叉神経に当たっており、痛みの原因となっています。Bのように緩衝材(黄色の◆)を用いて血管を移動させ、Cのように別の場所に固定することで、血管が神経に当たらないようにします。この治療の効果が出ると、手術の直後から痛みがなくなります。
片方のまぶたの筋肉が、意思とは関係なく繰り返し収縮(けいれん)します。疲労時に起こりやすいですが、悪化すると常にけいれんが生じ、日常生活に支障をきたします。
三叉神経痛と同じく、顔面神経という顔の筋肉を動かす脳神経が、頭の中で血管に圧迫されることが原因です。MRIでその様子を観察できることが多いです。クロナゼパム(リボトリール)という薬が有効ですが、効果が十分でない場合や、副作用のため内服が続けられない場合は、手術による治療も選択肢となります。三叉神経痛と同様、開頭手術により血管の位置を移動させ、顔面神経の圧迫をとり除きます。